一人ひとりの「存在意義(いのち)」が
豊かに溢れて循環する人、組織、社会を目ざして
心理学ベースのオーガニックシステムアプローチ
System Awareness
システムアウェアネスの基本的な考え方
このページでは、システムアウェアネスがどんな考え方でシステムに介入しているかを少しでも知っていただくために、その考え方の土台を要約してご説明しています。認定プロセスワーカーとして学んだ理論をベースに、組織や社会に応用する経験から有効と思われるものを加えて体系化したものとなっています。非線形の理論なので、前提を理解していないと難解な部分も多く、また、体験を繰り返していかないと理解が進まないのがシステムアウェアネスです。読んでみて、もう少し知りたいと思われたら、ぜひセミナーやワークショップで体験してみてください。
★システムアウェアネスとは
深層心理学の一派、ユング派から派生したプロセスワーク/プロセス指向心理学を、個人と組織、社会の成長により適応させやすく開発した手法です。全体システムとその中の個人の立ち位置の双方にアウェアネスを持ち、意識と行動における個人、関係性、組織/社会のポテンシャルを、身体性を伴ってより顕在化し、より豊かに生きることを目指しています。
もう少しいうと、深層心理学一般の目的である無意識の意識化を通じて、
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個人のレベル:一人ひとりがそれぞれの存在の源につながって
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関係性のレベル:お互いにつながり合いながら
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集団のレベル:日々を生きられる世界を作る
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を目指す手法のひとつです。
★システムアウェアネスの根幹となる考え方
1.アウェアネス原理:
<時空間の全体システムを司る根本原理は「アウェアネス」である>
アウェアネス原理は師でもあるプロセスワークの創始者アーノルド・ミンデルの思想から来ています。プロセスワーク時代から常にアウェアネスが原理に足るかどうかは、横山なりに日々の実践の中で検証してきましたが、未だこれを覆す体験に出会えていないので手法名にも入れて採用を続けています。
この原理に則って、その人、その関係性、その集団が、より全体のシステムにアウェアネスを持つにつれて、よりその人らしい個性が発露しつつ、全体システムと矛盾のない意識変容が起きると考えて、個人から集団までをその場に応じてサポートするのがシステムアウェアネスです。
2.世界の源泉は自然の動的なシステム:
<究極の全体システムは自然の動的なシステムである>
この真髄のポイントは
①人が生物である以上、自然=全体システムの一部に人も含まれる
②その自然システムは種子から芽が出て大きくなるように常に動いている
の2点です。
システムアウェアネスでは「存在意義」=自然がその源泉(Source)からそれぞれの存在に託したいのちの源とおきます。「存在意義」を常に視野に入れるのは、その人や組織が自然システムの中の本来的なものにつながるためです。
アウェアネスとは
先に述べたように、アウェアネスはシステムアウェアネスの基本原理です。では、アウェアネスとはなんでしょうか。
★深層心理学用語としてのアウェアネス:意識/無意識(図1参照)
システムアウェアネスは、プロセスワークとともにユング派の深層心理学を原点にしています。深層心理学にもさまざまな流派がありますが、共通しているのは、こころの全体は、意識と無意識から成っていると考える点です。
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図1に示すように、意識の領域は氷山の一角で、水面下のこころのほとんどの領域は無意識になっていると考えます。
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深層心理学は無意識に注意を向けて意識化すること=アウェアネスを基本とします
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広義には、意識されているものは全てアウェアネスと同義です。意づく、意識する、認識する、理解する、知っているなどの日常語はアウェアネスに属します。
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意識の中心を自我(ego)、こころの全体の中心を自己(Self)と呼びます。一般的に使われる自己は深層心理学的には自我に近いことが多いので、これらと区別するために大文字の自己と呼ばれることもあります。
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ユング派では、夜見る夢を無意識の変装された表出と考え、能動的想像法を使って紐解くことで、無意識にアウェアネスを向け、意識化していくことにより、意識を全体の中心である自己を目指します。
図1
こころの氷山モデル
★プロセスワーク以降のアウェアネス
プロセスワークはユング派のセラピストだったアーノルド・ミンデルが、夜見る夢だけでなく体も夢(無意識からのメッセージ)を見ることを発見したことから始まります。ここで身体知と無意識のアウェアネスを統合した体系を二者関係、集団の人間関係システムにも応用し、個人、人間関係、集団にフラクタルな組織を構造的なダイナミクスを含めたアウェアネスに持ち込めるようになっていきました。
システムアウェアネスは、それを人と社会の「成長」に特化して体系化したものです。
図2
刺激がアウェアネスに至るまでの情報処理プロセス
★アウェアネスと身体(図2参照)
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図2は何らかの刺激が思考のアウェアネスに至るまでを示したものです。刺激は感覚神経を通って意味づけされ知覚されます。ここまでは主に身体がやってくれます。これに比して、認知は、この知覚が、過去の経験や知識、記憶、すでに形成されている概念に基づいた思考、考察、推理などに基づいてそれを解釈する、知る、理解する、または知識を得る心理過程、情報処理のプロセスです。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AA%8D%E7%9F%A5)
思考は二つ以上の認知結果を矛盾がないように組み合わせる作業です。
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認知以降は過去の体験に基づいておりアウェアネスを持ちやすいのですが、このプロセスを見るとまずものごとを知るのは身体であることがわかります。この認知の幅を広げるには一旦知覚に戻る必要があります。その感覚を意識化することで、無意識が意識化されれば、内的な全体性により開かれていくとことが可能になるのではないでしょうか。
アウェアネスの実践のため大切なこと
★ものごとの二つの捉え方を知る:因果論と目的論(図3参照)
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因果論(Causality)の思考:原因と結果の結びつきを前提として、ものごとを捉える思考です。
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論理思考:過去の経験がこうだったから次もこうなるという直線的な思考で、時間軸に沿った線形的な思考です。
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システム思考:世界をシステムとして捉え、「システム」「情報」「制御」を柱として課題解決を図る思考(Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/システム思考より)で、ループ図を通して時間軸だけでなく空間軸に視野を広げた非線形な思考です。
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図3
因果論思考と目的論思考
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目的論(Finality)の思考:植物の種の中に芽が出てから実をつけるまでの全てが含まれているように、、最後に実現したものは可能性として全て最初に含まれているという前提の思考です。*アドラー心理学などで使われる目的論は人は何らかの目的があって結果を作り出しているという考え方でteleologyと呼ばれます。
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システムアウェアネス:共時性などの概念を持っているユングは、Finalityの意味の目的論を基本としており、プロセスワーク、システムアウェアネスもこれをベースに物事を考えます。過去、現在、未来を同じ場に置く空間軸に特化した思考といえます。
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★空間軸の思考(図4参照)と身体というセンサー
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時間的に過去にみえること、まだ実現しない未来にあると思えることでも、感情や身体の感覚、身体を伴って思い描くビジュアルなイメージなどとともに、人の空間軸の中で、まだ昇華されずに残っていたり、すでに思い描けていることは、過去であってもまだ起きていない未来のことでも、同じ空間に存在してシステムに影響を与えていると考えるのが空間軸の思考です。
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身体が感じる痛みや悲しみ、怒りや喜びといった感情や、充実感や腑に落ち感、不安感などの身体感覚は、過去のことでもこれから起きるかもしれないことを想像するだけでも、起こってきます。こうした感覚を空間軸センサーに使って、3次元的なシステムを捉えていきます。
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身体センサーを使うと、普段目に見えないプロセスが体感的に構造化できます。
図4
目的論思考
実際の空間の中で身体を移動した時に働く身体センサーを仕掛けに使って、アウェアネスを高めることがシステムアウェアネスのベースとなります。実際の空間の中で身体を移動した時に働く身体センサーを仕掛けに使って、アウェアネスを高めることがシステムアウェアネスのベースとなります。実際の空間の中で身体を移動した時に働く身体センサーを仕掛けに使って、アウェアネスを高めることがシステムアウェアネスのベースとなります。
アウェアネスのための基本的な態度
新しい気づきは、時に惹かれから導かれることもありますが、多くの場合葛藤を通じて生まれてきます。葛藤に出会ったら、因果論思考だけでなく、目的論思考で考え、さらに身体の持つ知性を取り入れていくことが大切です。
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因果論的には偶然であっても、起こっていることには意味があるかもしれないという考え方⇨「好奇心」
論理的に考えれば関係ないと思えることでも、何が起きているんだ?これには自分に大切な意味があるのか?と思える「好奇心」がとても大切な態度です。
システムアウェアネスの世界観
システムアウェアネスでは、本来止まることのない自然(じねん)の流れの一瞬一瞬を源泉として世界が生まれ、創られていると考えます。
この源泉から分化して個々の源泉からは土に埋まった種が芽を出し根を生やすように育ち、多様化しながら拡がっていくという世界観を持っています。
ホームーページの作成にあたり、世界が広がっていく際のステージを、プロセスワークの学びを生かしながら、
自然(じねん)の流れ→流れのスナップショットとしての源泉→中空→個々の源泉→シードリアリティ→多様なリアリティ→合意の取れたリアリティ
としてリフレームしてみました。(名称変更の可能性あります。)ここでいう3つのリアリティ=現実は、顕在化可能という意味で使っています。(図5参照)
図5
動的な源泉・3つの現実・中空
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自然(じねん)のながれ(Spontaneous Flow of Nature):自然が自ずと繰り出す流れ。その一瞬一瞬が源泉として世界に湧き上がっているような流れです。
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源泉(source):さまざまに使われる用語ですが、システムアウェアネスでは、自然(じねん)の流れのスナップショットとしてこの言葉を定義しています。潜在可能性に満ちた知覚不能な世界から知覚可能な世界への転換点です。
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中空(Emptiness):源泉から立ち上がったものの、まだ人が知覚できるまでになっていない世界です。
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個々の源泉(Individual Source):源泉から分化した個々の存在の源、存在意義。人、関係性、組織の各レベルで存在します。ここにアウェアネスを持てると、自然(じねん)の流れに併せて源泉から送られてく微細な情報をキャッチすることができます。
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シードリアリティ(Seed Reality):個々の源泉から立ち上がる未分化で全てがひとつであるような世界。これから始まる全てがそこに含まれている種のような世界です。
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多様なリアリティ(Diverse Reality):シードリアリティから分化したものが世界を構成するあらゆる多様性として存在する世界です。
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コンセンサスリアリティ(Consensus Reality):プロセスワーク用語を踏襲。合意している現実です。
システムアウェアネスの考える縦と横の多様性:
深層民主主義
個々の存在には3つのリアリティと中空と源泉という多様な次元が存在することは上に述べてきました。システムアウェアネスは、これを「縦の多様性とよびます。(図6−1)
また、源泉から分化してさまざまな人、関係性、集団が存在するので、それぞれが違う存在であると意味での多様性と同時に一体性が存在します。これを横の多様性とよびます。(図6−2)
つまり、世界には縦の多様性と横の多様性が存在していると同時に一体性も存在していると考えるわけです。これらの全ての多様性といった異性を大切にしようとする態度を深層民主主義と言います。
この世界観では、個々の内的な世界と外的な世界はフラクタルな構造になっていると考えます。
自分を耕すプログラムでご提供しているエルダーシップは、この深層民主主義を養うプログラムであるともいえます。
図6-1
縦の多様性・一体性
図6-2
横の多様性・一体性
図6-3
縦と横の多様性・一体性
パラレルワールドとその有効性
上でも述べたように、システムアウェアネスではコンセンサスリアリティ、多様なリアリティ、シードリアリティ、中空とフレームした次元の違う世界がパラレルに存在するという立場をとります。この立場では、存在の根源と繋がって全てがひとつであるような「シードリアリティ」と、ありとあらゆる多様性が存在する「多様なリアリティ」そしてその一部が可視化されている「コンセンサスリアリティ」は、異なる次元で同時並行して存在できることになります。
コンセンサスリアリティで私たちに見えている現実と同時に、必ず人は存在の根源と繋がっていると考えることにより、葛藤場面に出会ったとしても、その奥底にある存在の根源に対する信頼を保ちながら、目の前で起きている葛藤を全体の一部と捉えてその中に入っていくことができます。
この根源への信頼を自分に対しても他者に対してもゆるがせにしないことが、安全な場の中でアウェアネスを深めていくための器となります。
システムアウェアネスの考える動的平衡の器
シードリアリティは、未分化な世界、つまり、個々の源泉から立ち上がった情報が多様なものに分化される前の全てがひとつであるような世界です。未分化だけにプリミティブな場合もありますが分断がない世界です。分断がない世界は、傷つきのない無垢な世界でもあります。
社会で生きていくという営みは避けようもなく痛みと伴いますが。源泉に近づけば近づくほど傷つきから解放された世界に立ち戻っていくことを可能にします。ここに立ち戻ることができると、社会化の中で培われた偏見からも解放され、個々が本来持っている本質的ないのちから、世界の全体をより広い視野で見ていくことが可能になります。
シードリアリティは、理屈というより体感的な直感の世界ですが、この身体知のアウェアネスと思考的なアウェアネスが常に動的に平衡することで、安心安全な器をつくることができます。
システムアウェアネスが、シードリアリティにある「存在意義」を視野に入れるのは、動的に呼吸する安心安全の器を作るという目的も含まれています。